ビジネスホテル 東京のニュース

街の裏山には廃嘘と化した寺跡が見える。
文化大革命のとき、紅衛兵たちによって破壊されたシェカル寺院だ。 その徹底的な破壊ぶりに、恐怖感を覚えずにはいり込む。
長い長い登り坂が始まり、車はうなりながら登っていく。 しだいに冷気がただよってきた。
Sさんが苦しそうなので車を止めると、窓から暇吐を始めた。 これは大変だ。
さっそく横に寝かせて酸素を吸わせる。 顔面蒼白で、かなりむくんでいる。
標高も5000メートル近いはずである。 宿舎のシガール招待所は粗末な木造の平屋建てで、悪くいえば馬小屋という感じだが、場所柄致し方ないだろう。

一室に3人ずつで、鉄製のベッドが3つ並んだだけの部屋だ。 うす暗い裸電球が1個ぶら下がっただけで、いかにも殺風景だ。
一室を病室に仕立てて、SさんとOL2人の計3人の女性を収容し、酸素を吸ってもらう。 今夜が文字通り山場だ。
無事乗り切るためには、慎重に事に当たらねばならない。 油っこい中華料理には食傷ぎみで、消化不良にもなりやすいので、夕食は日本から持参の即席ラーメンとレトルト食品のおかゆとする。
午後10時の気温が3度。 暖房がないのでダウンを着たまま、ふとんにもぐり込む。
4日目。 シガールの招待所を出発して、ネパールとの国境の街ザンムーに向かう。
約270キロの行程。 いったん友好道路まで引き返し、本道に入るとすぐに検問所がある。
車の通行許可書を示して、約15分間西へ走ったところで、チョモランマへの道との分岐点に出る。 チョモランマを始めとするヒマラヤの大パノラマを見物するのには、この分岐点から南へ約1時間半かけて、チョコ・ラ峠(5200メートル)に登るのがいちばんである。
私は前に冬季チョモランマ北壁登山隊取材のため、単身ジープで、チョモランマのベースキャンプ(5150メートル)に行ったことがあるが、そのとき往復の2度にわたって、チョコ・ラ峠からヒマラヤ大山脈の絶景を見るチャンスに恵まれた。 峠から南のほうを見渡すと、どまん中に1段と高く、3角形でそびえているのがチョモランマ、左に高く突き出ているのがマカルー(8481メートル)、右のほうの大きな山塊がチョー・オュー(8153メートル)、さらに右へ左へと高峰群が続く。

ここは世界一のヒマラヤ大展望台だ。

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